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14万キロ走ったミッションをOHする

フロントカバー、リアエクステンション両方からの激しいオイル漏れ、それに加えてギアチェンジ時の「ガリッ」という引っ掛かりが酷くなったので降ろしたミッション。 以来、屋外保管、いや放置12年。 そろそろ何とかしてやらねば、と、OHすることにした。



漏れ出したオイルにこびり付いた泥がすさまじい層を形成している。 それにしても何でこんなに激しく漏れていたのか。
何故かクラッチピボットが緩んでオイルが滴っていた。 このミッションを降ろす前からそうだったのか、降ろしてからそうなったのか?
シャフトのサビも気になる。


スクレーパと灯油、古歯ブラシを使ってまずは汚れ落とし。




続いてリアエクステンションを外してみる。
12年間に渡る保管期間中ミッションオイルは抜いておいたのだが、開けてみると各部にはまだ油膜が残っている。
一方、カウンターシャフトとそのギア周りは全体的にヘドロ状の黒い汚れが多量に付着。 過去に軽い焼き付きでも起こしたのか。 カウンター5速ギアはプラーで引っ張るのにも思いのほか力が必要だった。


フロントカバー、そしてメインシャフトベアリング外周のスナップリングを外したのち、ベルハウジングを外せば、中身をごっそり取り出せる。
71Bの弱点の一つはカウンターシャフトのベアリングだと聞くが、旧来のものに比べてフロント側は大型化されている模様で、外径62mm。 これがDR30ターボCだと、何故かこれより外径は小さく、逆にラバーシール付き。


12年もの間ミッションオイルは抜いてあったのに、各ギアとも昨日まで動いていたかのように艶々。
恐るべし、オイルの油膜。
シフトフォークはFS5W71B最終型特有の大型で、特に1・2速は後の71Cにもほぼそのまま踏襲されたサイズ。
ちなみにDR30ターボC用71Bでは、1・2速のストライキングロッド径及びそのフォーク側の穴径が71Cと同じ16mmになる点を除けば、各フォークの形状自体はHR用と同じである。


手持ちのプラーを総動員してギアとシンクロハブを次々に引っ張り出す。


分解完了。


ただどうしても外せなかった箇所が一つ残った。 それは、ストライキングレバーをロッドに固定しているテーパーピン。
先端のナットを外して押せば終わりと思いきや、固着していてどうにもこうにも抜けてくれない。
ダブルナットにして手持ちのバイスプライヤーで押してみるが、ビクともしない。 バーナーであぶってもCRC5-56を吹いて時間を置いてみてもダメ。
リアエクステンション内にあるため、他の手持ちの工具ではアクセスできず、打つ手がないので、泣く泣く諦めた。
世の皆さんはココをどうやってクリアしているんでしょうか。
ストライキングロッド周りのOリング2個、交換したかったなあ・・・。

そして約半年が過ぎ・・・組み付け開始


膜厚3mmはあろうかという、ベルハウジング内側で層になっていたオイルと泥の汚れを落とし・・・


組み付け開始。
まずはアダプタプレートにベアリングを叩き入れ、リテーナを取り付け、固定ボルト周囲をカシメる。
ベアリングとシンクロのボークリングは全て新品へ交換することにした。
ボークリングは、コーンと重ねて隙間を見てみたところまだ使えそうではあったが、摺動するところは極力新品にしたいという気分的な側面もあり、新品を入れる。


各部の組み付けはミッションオイルを塗布しながら進める。 選んだオイルは、CastrolのTAF-X 75W-90
これを選んだのには一つ理由があって、GL-4規格のオイルを使いたかったから。
店頭で売られているFR用ミッションオイルのグレードとしてGL-5が最も一般的なようだが、ニッサンの71Bと71CはGL-4が指定グレード。 必然的に、ニッサン純正FR用ミッションオイルも、ごく一部の車種用を除いてGL-4グレードである。
GL-5はデフにも使えるように、と、極圧性確保のための添加剤が入っており、その成分はメーカー各社独自のものらしい。
シンクロのボークリングの材質は真鍮。 GL-5オイルに含まれる添加剤の中には真鍮への攻撃性を有するものがあると聞く。
GL-5で絶対にイケないわけではないんだろうが、不安要素は排除しておきたいので、GL-4に限定し数少ない市販品の中からこれを選んだ。


メインシャフトへ3・4速ギアとシンクロ機構一式を組み込む。
続いてこれをアダプタプレートのベアリングへ圧入するのだが、おそらくミッション組み付け工程の中で最も気を使うのが・・・


このスチールボールを落とさずにメインシャフトを挿入する作業、だと思う。
私はタイラップで構成部品全てを結束した状態で作業を進め、スペーサがベアリングインナーレースに着座する直前でライラップを外した。


プラハンで挿入できるところまで叩き入れ、あとはプレスで押す。


アダプタプレートをプレスの台に載せて押しているが、これは間違った作業方法。
ホントはベアリングのインナーレースを裏面から支えながらプレスで押すべきなのだが、この時はこれ以外に方法が思い浮かばず、結局この方法でやってしまった。
メインシャフトのシンクロスリーブとカウンターシャフトのギアが干渉しないよう注意しながら、2本を交互に押す。
プレスの下にはコンクリートブロックを置いて高さを稼ぐ。


最も気を使う作業がひとまず完了。
と、ここで思ったのだが、5速・リバースギア類を組み、ナットを締めて引っ張り込めば先述のプレスを使わずとも組めたのでは・・・と。

完成。


残りのギア、シンクロ機構、フォークロッド&フォーク、ベアリング類をイッキに組み付ける。
ベアリングの組み付け方としては、シャフトごと立ててプレスで押すのがおそらく正解なのだが、手持ちのプレスではとてもではないがそんな高さを稼げないので、有り合わせのプラーやソケットレンチコマ、角パイプなどを総動員してクリアした。



本来シャフト端部を押さえながらプレスで入れるべきベアリングを叩いて組んだ後は、必ずセンターベアリングとリテーナ、それにメインとカウンターギアの位置関係にズレが生じていないかを確認するのが必要だと思う。
実際、カウンターシャフトリアエンド側のベアリングを叩き込み終わってシャフトを回転させたら、メインとカウンターの5速ギア側面同士がゴリゴリと擦れ合う音がしたので、良く見るとカウンターシャフトベアリングがやや前方に動き、リテーナ段付き部との隙間が出来ていた。 あやうく見過ごすところだった。
そのほか、各スナップリングやシム類の厚さを分解時にメモしておいたので、それらが正しく組まれていることを確認。


各部のチェックが済んだらいよいよベルハウジングへの組み込み。
リテーナプレート外周に液体パッキンを塗り、リテーナプレートを載せて均等にプラハンで叩き、馴染ませていく。
液体パッキンはスリーボンド1215を使った。


続いてリアエクステンション。 プラハンで全周を叩き馴染ませたあと、ボルトを均等に締め付けていく。
全周から液体パッキンが漏れ出てきたのでOKだろう。
写真を撮り忘れたが、このあとベルハウジング前方に顔を出したメインシャフトベアリング外周に付属のスナップリングをはめ込み、カウンターシャフトベアリング前面には元付いていたシムをグリスを塗って貼り付け、フロントカバーを取り付けた。


すっかりキレイになったフロントカバーに、クラッチ用ピボットを組み付ける。
メインドライブシャフトのスプラインはスチールブラシと先の細いヤスリでサビを落とし、グリスをすり込んでおいた。 ただスプラインの山は除去したサビの分だけ失われているワケで・・・どうかナメませんように。
ピボットの座面にはプレーンワッシャを入れた。 ピボットのネジ部はフロントカバー内部でミッションオイルに浸っているにもかかわらず、OH前にはこのワッシャ、何故かスプリングワッシャだった。 ここを過去に自分でイジったことはない。
本ページ冒頭で言っているベルハウジング内の「激しい漏れ」はこのスプリングワッシャが原因だったのだろう。
<訂正>
別の71Bミッションを見てもやはりここはスプリングワッシャでした。 よって、スプリングワッシャに戻し、ピボットねじ部にはシール剤を塗布して組み付けました。


交換できなかったOリング2個がこの回転部分の中に。 オイル、漏れて来ませんように。 次回手を付けるのはいつになることか。


スピードメーターケーブル取付用のボスがいつの間にかモゲていた。 まだ使えたのに残念。


ブリーザパイプの中にはドロが入り込み、完全に詰まっていた。 おそらくそれが原因で走行中にミッション内圧が異常に高くなり、ミッション前後からオイルが噴き出る要因の一つになったのではないかと思う。
ここは71Cと同様にビニールチューブで延長し、異物が入りにくいようにしようと思っている。


こんな感じにしてみました。

OHを終えてみて

シムやスペーサの径、厚さなど、間違えやすいものは全て分解時にメモしておきさえすれば、それらを元あった位置、状態に組み立てるだけであれば、シロウトでも自力で何とかできる、というのが実感。
ただ、プレスはやっぱり高さの稼げるプロ用が欲しいところ。 家庭にあるような小さいプレス(そもそも普通の家庭にはそんなもの無いが)はミッションの作業には役不足なため、ベアリングの圧入作業では不安定かつ本来とは違う荷重の掛け方になる場面が多くなる。
プラー類も、アームを延長するなど、臨機応変の工夫が必要。

ミッション積み替え


ますはフロントを持ち上げてウマを掛け、リアを持ち上げてウマを掛け、再びフロントに回って更に持ち上げ・・・と、数回に分けてやる必要がある
フロントを先に一気に持ち上げてしまうと、下がったガソリンタンクにジャッキが干渉して、リアを持ち上げることが出来ないのだ。
4輪を宙に浮かすこの作業だけで疲れてしまう。


続いて、載っていたミッションを降ろす。 写真は降ろし終えたの図。
ミッションを降ろすには、付帯作業が多くある。 ざっと挙げると、室内側からコンソールとシフトレバーの取り外し、バッテリー切り離し、フロア下に行ってスターターモータ、クラッチオペレーションシリンダ、エキゾーストパイピング、サイドブレーキワイヤ、プロペラシャフトの取り外し。
ミッションのリア側マウントを外す前に、エンジンが傾き過ぎないよう、ブロックとバルクヘッドの間に適当な木片を入れるのも忘れてはいけない。


2機並ぶ71Bショートミッション。 右が今まで搭載されていたもので、1994年に解体屋で買ってきて以来、リア側オイルシールとリバース・ニュートラルの各スイッチを交換したが基本的にそのままずっと使ってきた。
2個のスイッチは口元にシール剤1215を塗ってOH済みミッションへと移植。


レリースフォーク、ベアリングなどをグリスアップして移植し、ミッションオイルを注入。
車両への搭載には、皿を自作アダプタに付け替えたフロアジャッキを使う。


ひとまず搭載完了。

続きは後日。
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